ボジョレー・ヌーヴォー

唐突ですが。
お酒のコマーシャル、味があるものが多いと思いませんか?
石川さゆりの艶っぽい歌声だったり、氷がからんとグラスに当たる音だったり
大人になるといいなと思う『良さ』を突いているように思います。
昔、父の日にカガミクリスタルのウィスキーグラスを贈ったところ氷を入れてくるくる回したときの音が違うと喜んでおりました。


非常に個人的ですが、サントリーオールドのCMがすごく好きです。
「人間みな兄弟~夜が来る」の曲がいいのですが、父と娘のいつかは出来なくなるであろうやり取りに、切なくなります。
國村隼さん渋いです。


そんなこんなで今月は、お酒です。
解禁日を間近に控えた、ボジョレーヌーヴォーの世界的ヒットの軌跡です。


 


まずはボジョレーヌーヴォーの基礎知識です。
ご存知かとは思いますがお付き合いください。


ボジョレーヌーヴォーはフランスの北部、ブルゴーニュ地方南部にある
丘陵地帯、ボジョレー地区で作られる初物の赤ワインです。
すばやくブドウを発酵させて作るため、わずかに炭酸ガスが含まれています。
独特の清涼感があり、渋味の少ない、みずみずしい味が楽しめます。
ワイン初心者にもお勧めだそうですよ。


発売日は、11月の第3木曜日です。変わることはありません。
この日を破ると、翌年からはワインを卸してもらえなくなります。
「木曜日」って、珍しいですよね。
日付を固定すると、土日祝日に当たることがあります。
輸送時、混雑する可能性が高くなります。
これを避けるために、解禁日は平日に定めたのだそうです。


販売先は世界120か国に及びます。一番の輸出先は日本、次いでアメリカです。
凝っているというか、非常に興味深かったのですが、几帳面なことに
各国の嗜好にあわせ、輸出先によって味や香りを少しづつ変えているそうです。
今年の日本のボジョレーと、アメリカのそれとはきっと風味が違うことでしょう。
こう聞くと、俄然アメリカのワインにも興味がわいてきます。


日本では、ボジョレー解禁の時、かなり華やかにお祝いします。
またボジョレー予約のための販促活動も念入りに実施しています。


こうした販促には、きちんと協力先が控えています。
フランス食品振興会という団体があり、そこでフランスワインや
チーズなどのポスターやパンフレットを提供しています。
また、食材に関するセミナーなども行っています。


ボジョレー解禁に際しては、ポスター配布、キャンペーンの当選商品提供、
試飲のマネキン費用一部負担などを行います。


こちら、フランス食品販売業者向けのサービスです。
国がきちんとキャンペーンに協力してくれているのですね。


 


さて、ボジョレーヌーヴォーの故郷フランスでは、どのような活動が行われるのでしょうか。


もともとフランスでは、ボジョレーは友達同士で気軽に飲むワイン、という位置づけでした。
決して高級品ではありませんし、お祭り騒ぎをして頂くようなものでもありません。


ボジョレーヌーヴォー解禁の時、カジュアルなレストランなどでは
”Le Beaujolais nouveau est arrive!”
(ボジョレー・ヌーヴォーが入荷しました:フランス語会話講座より)
というポスターが貼ってあるので、頼む人も多いし、バーで盛り上がる人も
多いようなのですが、日本ほどの大騒ぎにはなりません。


それでもやっぱりフランス人にとって重要なイベントでして
各地のワインバーやビストロで、新酒のコルクを抜いて祝うパーティが開催されます。
その他、ボジョレーの中心地では地域祭り、リヨン近郊の町タラルでは
『Beaujolais Gourmand』と銘打たれた映画上映会が開催されるなど、関連イベントもあります。


各国なりの楽しみ方があるようです。




ボジョレーヌーヴォーの最初は、地元の村で、日常的に飲むカジュアルなワインでしかありませんでした。


そのワインを、世界的に有名にしたのは名醸造家、ジョルジュ・デュブッフという人でした。


地方のワインをどのように売るか・・


 ・ワインのブランド構築をするにはどうしたらいいか

 ・短期間で売り切るためにはどうしたらいいか

 ・ワインを皆に知ってもらうためにはどうしたらいいか


このような点をクリアするべく、様々な活動を行いました。


まず、品質を確かなものとしました。
まがい物はどんな手を使っても、いずれ売れなくなります。


デュブッフ氏は、地元の400件ものぶどう栽培農家と契約し、そこで仕入れたブドウを使って醸造から瓶詰めまで行いました。
デュブッフ氏のワイン作りの才能に左右されている感はありますが類まれな嗅覚と味覚は、すばらしい味のワインを作り出しました。


一般的には、ワインは熟成して寝かせると味が深まりますが、
ボジョレーヌーヴォーは通常のワインとは異なる醸造方法で作るため、
賞味期限は10日~2週間程度しかありません。普通の赤ワインとはまったく別物です。


ですので、短期間で売り切らなくてはなりません。
これを叶えるため、ミシュランガイドを手にフランス国内の高級レストランを訪問しました。
客単価、客回転ともに高く、売り上げ本数が上がると考えたのだと思います。
この営業の結果、ボトルに詰めたての新鮮なワインを大量に売ることに成功しました。


もうひとつ、11月3週目の木曜日にボジョレー・ヌーヴォーを解禁する、という初めてのイベントを企画しました。
イベントを盛り上げるためにフランスのセレブたちを毎回招待することで世間の注目を集めていきました。


こうしてまずは地道に、時には派手に営業戦略を立て実行したおかげで
今や120カ国に輸出をするまでのワインに成長しました。
ちなみに、日本への輸出は総輸出量の45%に達するそうです。
私たちは限りなく大得意様といえますね。


ボジョレーヌーヴォーは、1代によって築き上げられたブランドです。
デュブッフ氏の偉業に敬意をこめて、あらゆる国のワイン愛好家たちが「ボジョレーの帝王」という呼び名を捧げています。


きわめて主観的ではありますが、私はボジョレーヌーヴォーの人気は、ラベルの美しさもあるように思います。
鮮やかだったり斬新だったり、見とれるようなボトルラベルが並んでいるとそれだけで購買意欲がわいてくるように感じます。



ボジョレーヌーヴォーが日本で人気を得ているのは
「初物を楽しむ」という姿勢が日本の気質にあっているのだと思います。


初物を頂くと寿命が七十五日延びるといいますし、昔から初物への情熱は並々ならぬものがありました。
「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」と古人もおっしゃっています。


初物の価格高騰を危惧し、江戸時代には「初物禁止令」まで出されたそうです。
でも、誰も守らなかったそうですよ。


新茶や新米でも、もしかしたら同じような販促ができるのかもしれません。
新米をいただこうカウントダウン、してみたいです。


 


かまど炊きのご飯をみんなで塩かけて食べましょ、なんて粋だと思いませんか。
日本人の食道楽としてはなかなかステキだと思うのです。



2008/11/11 作成

システム開発・アウトソーシングの高崎共同計算センター